アメリカのホリデーコマーシャル戦略について
11月からクリスマスは始まっている…
12月といえばやっぱりクリスマスですね。
昨年はアメリカでもコロナの影響ですこし盛り上がりに欠けたこともあってか、今年は特に盛り上がっている様子です。
企業にとっても一大商戦になるのは皆さんも想像がつくと思いますが、アメリカでは12月下旬のクリスマス直前だけではなく、11月の下旬からすでに勝負は始まっています。
毎年11月の第四木曜日には一大イベントのサンクスギビング、その翌日の金曜日はブラック・フライデーがあります。
ブラック・フライデーは最近日本でも知られるようになってきたと思いますが、毎年様々なリテール系のお店が大きなセールを行う日で、お店やセール品の内容によっては前日から徹夜組の人たちが並ぶ程みんな真剣にお買い物をします。
ここ数年はオンラインで買い物を済ませる人も増えてきた結果、ブラックフライデーの翌週の月曜日はサイバーマンデーという日も登場し、ついには11月の頭からブラックフライデーセールが始まってしまったりと、各社様々な戦略でこの時期に臨んでいます。
なぜ様々な企業がこの時期にセール合戦をするかというと、
・自分がほしいセール商品を自ら探しに来るので、客足が増える
・クリスマス前に在庫処分ができる
・新たな客層を呼び寄せることができる
・結果的にセール外の商品も買ってもらえる
・クリスマス前後の混雑しやすい運送系統を避けることができる
などの理由があります。
特にリテール系は一週間ほど前からセール情報を公開して期待感をあげたりなどしています。私もこの季節にほしいものがあったらブラック・フライデーのセール内で探せるか確認するところからいつも始めますね。
クリスマスは家族で過ごすものー
日本のクリスマスは「恋人同士でロマンチックなひとときを」、というイメージが一般的ですが、アメリカはあまりロマンチック要素を前面に出しません。どちらかというと家族と一緒に過ごすのが一般的とされていて、日本でいう年末・年始のような印象です。そのかわりアメリカの年末・年始は大晦日と元日がお休みの企業が多く、意外とあっさりしていて、日本人としてはすこし悲しくなります…。
ホリデーコマーシャル紹介
クリスマスシーズンがアメリカでいかに一大イベントとしてとらえられているかご理解いただけたかと思います。長い前置きになりましたが、この記事では伝統ともなりつつあるリテール系企業のクリスマスのコマーシャルをいくつか紹介したいと思います。
ストーリー系
商品を露骨に宣伝しない、ショートストーリー
Holiday: Saving Simon
Appleが最新型のiPhone Proを使用してショートフィルムのコマーシャルを制作。iPhoneがよく知られている商品だからこそできるCMですね。
Home Depot: Does Santa Shop Here?
Home Depotというアメリカの住宅リフォーム・建設資材の企業がアラスカのHome Depotにサンタが通っているという噂を聞きつけ取材にくるというモキュメンタリースタイルのCMです。
Kindness, the greatest gift
AmazonのホリデーCM、あまりクリスマスを前面に押し出していないもののメンタル・ヘルスなどの問題にも注目していてほっこりするストーリーです。
Macy’s Presents: Tiptoe and the flying machine
メイシーズは大型デパートメントストアでクリスマスといえばMacy’sがいつも盛大にお祝いしています。
ファミリー系
ホリデーシーズンは家族や友人で集まってお祝い、という心温まるCM集
Family Portrait: A Joy-filled Christmas Card From Walmart
Walmartは米国でも最大級の大型スーパーで、多様な家族がホリデーシーズンをお祝いしていますね。
Target Holiday| The Holidays are meant to be shared
TargetもWalmart同様の大型スーパーで、CM内ではヒンドゥー教の祭日ディーワーリーやユダヤ教のハヌカ等様々な背景の人たちが内で登場していますね。
Etsy- Give More than a Gift
Etsyは4種類のコマーシャルで様々なホリデーの心温まるストーリーを作り出しました。
プロダクト系
シンプルな自社の商品の宣伝をするCM
Rebuild the world! Anything is possible with LEGO
レゴは従来のジェンダーのステレオタイプにとらわれず、様々な子供たちがイマジネーションで作り出していくコマーシャルを作成しています。
近年のホリデー広告に見られるダイバーシティの重要性
先ほどはあえてクリスマスシーズンと表記しましたが、最近だと「ホリデーシーズン」とも言われて、近年では企業の広告はクリスマスを祝わない人にも配慮した表現をするようになってきました。例えばユダヤ教のハヌカーで使われる燭台が一部のCMだと見えたりします。メリークリスマスは現在も使われているものの、最近はすべてまとめて”ハッピーホリデー(Happy Holiday)”が一般的になってきています。宗教的な配慮だけでなく、サンタは白人以外にも、アフリカ系として描かれていたり、ゲイカップルのファミリーなど多様性のある様々な家族の形がそれぞれのCMでみてとれますね!
いわゆるありきたりなクリスマスの広告だと、サンタクロースやクリスマスツリー、家族で食事を囲む、など想像つくとは思いますが、ここ数年でコマーシャルはどんどんと変化を遂げています。来年、再来年もどんどん変わっていくのは簡単に想像がつきますね。毎年どんな米国コマーシャルが作られているのかはアメリカに住んで日常的にコマーシャルに触れていないと認識しづらいと思うので、この記事が参考になれば幸いです。